いつもの雇用契約書をそのまま外国人にも使っていいのか、不安になっていませんか?
外国人版の雇用契約書は、日本人用とは別物です。同じ書式の使い回しは危険。理由はシンプルで、求められる配慮が増えるからです。母国語での明示、在留資格との整合、来日前からの条件確認。ここを外すと「聞いていない」が起こります。
正直なところ、この三つでつまずく企業はとても多い。実は、賃金や条件そのものより「伝わっていなかった」ことが揉め事の入口になります。この記事では、外国人版ならではの特徴と、最低限おさえるべき項目を整理します。読み終える頃には、自社の契約書を直すべきか判断できるはずです。
この記事のポイント
- 外国人版の最大の特徴は「本人が理解できる言語での明示」。日本語だけの契約書は、署名があっても「分かっていなかった」と争われやすくなります。母国語またはやさしい日本語での確認がカギです。
- 在留資格で認められた業務と契約内容を一致させる。資格外の仕事を契約に書くと、不法就労や在留更新の不許可につながります。契約書とビザはセットで考えるべきです。
- 労働条件の明示義務は国籍を問わず同じ。日本人より基準が緩いわけではありません。むしろ説明不足が表面化しやすいぶん、書面化と確認を丁寧にする必要があります。
この記事の結論
- 一言で言うと、外国人版は「内容」より「伝え方」で差がつく契約書です。
- 最も重要なのは、母国語明示と在留資格との整合の二つ。
- 失敗しないためには、署名の前に「本人が本当に理解したか」を確認する一手間を入れることです。
📋 外国人版の雇用契約書は、日本人用と何が違うのか
違いその1:本人が理解できる言語での明示が前提になる
最大の違いはここです。労働条件は、本人が理解できる形で示す。日本語が読めない人に日本語の契約書だけ渡しても、明示したことになりにくいのです。
労働基準法では、賃金・労働時間・休日・契約期間といった条件を、書面で明示するよう企業に義務づけています。国籍は関係ありません。ただ外国人の場合、日本語の書面を渡しただけでは「理解した」とは言いにくい。だから母国語、あるいはやさしい日本語での併記が現実的な対応になります。
厚生労働省も、外国人労働者向けに多言語のモデル労働条件通知書を用意しています。英語・中国語・ベトナム語など複数言語の様式が公開されていて、これを下敷きにすると抜け漏れが減ります。
正直なところ、全文を完璧に翻訳する必要はありません。要は、賃金や仕事の中身といった核心を本人が誤解しないこと。そこさえ押さえれば形式はある程度柔軟でいいのです。
違いその2:在留資格で認められた業務と一致させる必要がある
ここが日本人用には存在しない特徴です。外国人には「やっていい仕事の範囲」が在留資格ごとに決まっています。
たとえば技術・人文知識・国際業務(いわゆる技人国)の人に、契約書で単純作業ばかりを任せる内容を書いてしまう。これは資格と業務がずれた状態です。在留資格の更新時に問題視されることもあります。特定技能なら、その分野で認められた業務に限られます。
実は、契約書の文面と実際の業務がちぐはぐなケースは少なくありません。「契約書は事務職、現場は倉庫作業」のような。これは本人にとっても会社にとってもリスクです。契約書を作る前に、まず「この資格でこの仕事をさせていいか」を確認する。順番を逆にしないことが大事です。
弊社にも「採用してから業務範囲のズレに気づいた」という相談がときどき来ます。むしろ見切り発車で進めて後から直すほうが、コストも時間もかかりますから。
違いその3:来日前・入社前の「条件のすり合わせ」が重みを持つ
日本人の中途採用なら、面接で口頭説明して入社時に契約、という流れでも大きな問題は起きにくい。外国人の場合は、ここに距離と言葉の壁が加わります。
海外から来る人なら、来日前に聞いていた条件と実際が違う、というズレが致命傷になります。住居費の天引き、想定残業、賞与の有無。こうした「言ったつもり・聞いたつもり」が、入社直後の離職を招きます。
だからこそ、入社前の早い段階で書面とその翻訳を共有し、本人に確認してもらう。この一手間が効きます。手間に見えて、いちばんの近道なんですね。
🔑 トラブルを防ぐために必ず盛り込むべき項目
必須項目1:賃金・控除・残業の扱いを具体的に書く
最も揉めるのが賃金です。ここは数字で、はっきり書きます。
基本給だけでなく、各種手当、そして控除の内訳。社宅費・水道光熱費を給与から引くなら、その金額と根拠を明記する。「手取りがこんなに少ないとは思わなかった」は、控除の説明不足から生まれます。残業についても、割増率と支払いのルールを書いておく。曖昧にしておくと、後で「未払いだ」と指摘されかねません。
ケースによりますが、母国の感覚では「額面=手取り」と思っている人もいます。そこの認識合わせを契約段階でやるかどうか。ここで定着率がけっこう変わります。
必須項目2:業務内容・就業場所を在留資格に沿って明記する
前半でも触れた在留資格との整合は、契約書の文面に落とし込んで初めて意味を持ちます。
担当する業務、就業場所、配置転換の可能性。これらを、認められた活動範囲の中で書く。派遣で受け入れる場合は、派遣先での業務が資格の範囲に収まっているかも確認が要ります。
気持ちは分かりますが、ここは慎重に。
必須項目3:契約期間・更新・退職の条件を明確にする
在留期限と契約期間は連動します。だから契約期間の書き方も、日本人用より神経を使います。
有期契約なら、期間と更新の有無、更新の判断基準を書く。退職についても、本人が母国へ帰る場合の手続きや、私物・社会保険の扱いに触れておくと、いざというとき淡々と進められます。
実は、この「辞めるとき」の取り決めを最初に書いておく会社ほど、トラブルが静かに終わります。
❓ よくある質問
Q1. 雇用契約書は必ず母国語で作らないといけませんか?
A.
1. 法律で「母国語で作れ」と義務づけられているわけではありません。
2. ただし労働条件は本人が理解できる形で明示する必要があり、日本語のみでは不十分になりがちです。
3. 母国語またはやさしい日本語の併記が、現実的で安全な対応です。
Q2. 厚生労働省のモデル様式を使えば大丈夫ですか?
A.
1. 多言語のモデル労働条件通知書は良い土台になり、抜け漏れを大きく減らせます。
2. ただし自社の手当・控除・業務内容は個別に書き足す必要があります。
3. 雛形をそのまま使うのではなく、自社仕様に調整して使うのが正解です。
Q3. 日本人用の契約書を翻訳するだけでは足りませんか?
A.
1. 翻訳は出発点ですが、それだけでは足りないことが多いです。
2. 在留資格と業務内容の整合という、日本人用にはない確認が必要だからです。
3. 翻訳に加えて「資格の範囲チェック」をセットで行ってください。
Q4. 在留資格と契約の業務がずれていると、何が起きますか?
A.
A. 本人の在留資格・在留期限と担当業務を照合し、必要な手続き、提出期限、担当者を一覧にしてください。資格変更や更新が必要な場合は、申請先の最新案内を確認し、不明点は入管や資格を持つ専門家に相談しましょう。
2. 会社側も不法就労助長に問われる可能性があります。
3. 契約書を作る前に、資格で認められた業務かどうかを必ず確認しましょう。
Q5. 賃金からの控除はどこまで契約書に書くべきですか?
A.
1. 社宅費・水道光熱費など、給与から引く項目はすべて金額と根拠を明記します。
2. 控除の説明不足は「手取りが少ない」という不満の最大の原因です。
3. 額面と手取りの両方を本人に示すと、認識のズレを防げます。
Q6. 契約書のチェックは社内だけでできますか?
A.
1. 単純な雇用なら社内対応も可能ですが、在留資格が絡むと判断が難しくなります。
2. 資格外活動や業務範囲の見極めは専門知識が要る場面が多いです。
3. 不安な部分だけ登録支援機関や専門家に確認する、という使い分けが現実的です。
Q7. 派遣で受け入れる場合、契約書で気をつけることは?
A.
1. 派遣先での実際の業務が、在留資格の範囲に収まっているかの確認が要ります。
2. 雇用契約は派遣元と結ぶため、就業条件明示書との整合も必要です。
3. 在留資格に強い派遣会社を選ぶと、このあたりの確認を任せられます。
翻訳版と原文の条件を照合する
雇用契約書は、名称が翻訳されているだけで内容が一致するとは限りません。賃金、期間、勤務場所、時間、変更の範囲などを原文と照合し、解釈が分かれる表現は確認します。本人が質問した点への回答も残し、署名を受け取ることだけを説明の完了にしないようにしましょう。
契約書と実際の運用を対応させて確認する
契約内容を確認するときは、書類の名称やひな形がそろっていることだけで判断しません。実際に予定している仕事、場所、時間、指示する人、費用の負担を具体的に書き出し、契約書の該当箇所と照合します。同じ言葉でも関係者の理解が違うことがあるため、「対応に含まれる」「別途協議」といった箇所は、何が決まっていて何が未確定なのかを確認してください。現場の運用と契約上の約束が違う状態を放置しないことが大切です。
変更が生じる場合の連絡方法も確認します。人数、担当業務、勤務場所、勤務時間などを現場の口頭連絡だけで変更せず、契約や在留資格、労務管理への影響を担当者が確認できる経路を作ります。変更日、変更する理由、関係者への説明、必要な書面の更新を記録しましょう。相手方が同意したと担当者が考えていても、本人や現場へ伝わっているとは限りません。伝達先と確認方法まで決めておくと、認識の違いを点検できます。
まとめ
この記事のまとめ:要点3つ
- 外国人版の雇用契約書は「内容」より「伝え方」で差がつく。母国語またはやさしい日本語での明示が、後の「聞いていない」を防ぎます。
- 在留資格で認められた業務と契約内容を一致させる。契約書とビザはセットで考え、作成前に資格の範囲を確認することが欠かせません。
- 賃金の控除・業務範囲・退職条件を具体的に書く。曖昧さを残さないことが、定着と無用なトラブル回避の両方につながります。
外国人版の契約書づくりは、慣れるまでは確かに手間に感じます。でも一度型ができれば、そこから先は驚くほど楽になります。自社の契約書がこのままでいいか迷ったら、まずは話だけでも聞かせてください。在留資格の整合から書面の整え方まで、現場の実情に合わせて一緒に確認していけます。
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