外国人従業員に36協定や残業の上限をきちんと説明できておらず、知らぬ間に違反していないか不安ですか。
36協定と残業の上限は、外国人従業員にも日本人と同じように適用されます。説明したつもりが「伝わっていない」。ここが違反の入り口です。時間外労働は原則で月45時間・年360時間まで。この上限を超えると、企業側が罰則の対象になります。国籍は関係ありません。だからこそ、母語や制度が違う相手には「言い方」を変える必要があります。
「うちは口頭で伝えたはず…」「本人が残業したいと言うから任せていた」——労務の相談現場で、よく耳にする声です。悪気はない。でも、説明が不十分なまま長時間労働が常態化すると、気づいたときには是正勧告、という例も。この記事では、36協定の基本と上限、そして外国人従業員に「伝わる」説明のしかたを、実例と数字で整理します。読み終える頃には、自社の何を直すべきかがはっきりするはずです。
この記事のポイント
- 36協定と残業上限は国籍を問わず適用される。外国人だから緩くなることはなく、月45時間・年360時間が原則の上限です。
- 「説明した」と「伝わった」は別物。多言語ややさしい日本語で、上限と割増賃金を本人が理解できる形にすることが違反防止の要です。
- 管理と記録の仕組みで未然に防げる。労働時間の可視化と同意の書面化を整えておけば、トラブルの多くは事前に止められます。
この記事の結論
- 一言で言うと、36協定は「結んで終わり」ではなく「伝わって初めて機能する」ルールです。
- 最も重要なのは、上限(月45時間・年360時間)と割増賃金を本人の母語レベルで理解してもらうこと。
- 違反しないためには、労働時間を記録・可視化し、超過の兆しを月単位で早めに把握することです。
📌 36協定と時間外労働の上限、まず押さえる基本
制度の骨組みを先に整理します。ここがぼやけていると、説明も曖昧になります。
36協定とは何か、何を結ぶのか
36協定は、労働基準法36条にもとづく労使協定です。これを結んで労働基準監督署へ届け出て、初めて法定時間を超える残業や休日労働をさせられます。裏を返すと、協定なしの残業は原則できません。ここは外国人でも日本人でも同じです。
正直なところ、「協定は結んだが中身を従業員に説明していない」という会社は少なくありません。届出はゴールではなく、スタート地点。何時間まで残業を頼めるのか、休日出勤はどう扱うのか。ここを現場と共有しておかないと、運用が制度から離れていきます。
もう一つ大事なのが、協定には有効期間がある点です。多くは1年ごとに結び直して届け出ます。うっかり更新を忘れると、その間の残業は根拠を失う。実は、担当者の異動や繁忙が重なると、この更新が抜けやすいのです。カレンダーに期限を入れておく。地味ですが、効きます。
上限は「月45時間・年360時間」が原則
時間外労働の上限は、原則で1か月45時間、1年360時間です。2019年の働き方改革関連法で罰則付きの上限として定められ、厚生労働省もこの基準を明確に示しています。臨時的な特別の事情があり特別条項を結んだ場合でも、年720時間、単月100時間未満(休日労働含む)、複数月平均80時間以内といった枠を超えられません。
数字が多くて身構えるかもしれません。でも実務でまず握るべきは、原則の「月45・年360」です。ここを基準線に置き、特別条項はあくまで例外と考える。この順番で理解しておくと、現場の判断がぶれにくくなります。
説明不足が招く違反リスクと罰則
上限を超えて働かせると、企業側が是正勧告や罰則(6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金)の対象になり得ます。ここで見落としがちなのが、「本人が希望したから」は免罪符にならない点です。同意があっても、上限そのものは動きません。
実は、外国人従業員のケースで多いのが「残業=歓迎」という受け止めの違いです。稼ぎたい気持ちから長時間働こうとする。会社も断りにくい。結果として上限に近づく。悪意なく積み上がるからこそ、危ういのです。ケースによりますが、説明不足と管理不足が重なると、違反は静かに進みます。
厚生労働省の「外国人雇用状況の届出」からも、外国人労働者は年々増え、幅広い業種に広がっているのが分かります。人手不足の現場ほど、一人あたりの残業が膨らみやすい。だからこそ、増える現場ほど上限管理の仕組みが要ります。「うちは大丈夫」と思っている会社ほど、記録を見返すと危ういラインに乗っていた、という話は珍しくありません。
🌏 外国人従業員に「伝わる」説明のしかた
制度を知っていても、伝わらなければ意味がありません。ここからは伝え方の実務です。
まず確認したい3つのチェックポイント
説明の抜けは、次の3点を確認するだけでかなり防げます。判断に迷ったら、ここへ立ち返ってください。
第一に、上限(月45時間・年360時間)を本人が数字で理解しているか。第二に、残業には割増賃金(法定で25%以上)がつくと分かっているか。第三に、残業は「命令ではなく同意にもとづく」と伝わっているか。この3つが揃って初めて「説明した」と言えます。逆に、どれか一つでも曖昧なら、そこが将来のトラブルの芽になります。
多言語・やさしい日本語で伝える
日本語の契約書を渡して読み上げるだけ、では伝わりません。専門用語が多いからです。ここで効くのが、母語での補足と「やさしい日本語」です。「時間外労働」を「決められた時間より多く働くこと」と言い換える。一文を短く区切る。これだけで理解度が変わります。
出入国在留管理庁も、生活・就労のガイドでやさしい日本語の活用を進めています。全部を翻訳する必要はありません。上限・割増賃金・休みの取り方——ここだけは母語で確実に。弊社の経験上、重要部分を母語の資料にして手渡すと、後々の「聞いていない」がぐっと減ります。
翻訳アプリを現場で共有しておくのも現実的な一手です。ただ、機械翻訳は制度用語で崩れることがある。だから重要書類は、事前に整えた定型の母語資料を使う。日々のやり取りはアプリで補う。この使い分けが、コストと正確さのバランスとして落ち着きやすいです。
現場の声に学ぶ、伝わらなかった例と伝わった例
食品工場の労務担当の方は、こう振り返っていました。「本人が『もっと働きたい』と言うので任せていたら、月の残業が60時間を超えていて…。あとで上限を知って青ざめました」。善意のすれ違いが積み上がった例です。
一方、ホテルの現場は逆でした。ベトナム出身のスタッフさんが「最初に母国語で『月◯時間まで』と紙で見せてもらえたから安心して働けた」と話してくれました。その紙には「残業は1か月45時間まで」「45時間を超えそうな月は事前に相談」「残業には25%の割増がつく」の3点だけを母語で大きく書いていたそうです。数字を一枚にまとめただけですが、同じ残業でも最初の受け止めが変わります。派手な仕組みは要りません。伝わる形にして、記録に残す。それだけです。
よくあるのが、入社時に一度説明して終わりにしてしまうパターンです。人は忘れます。言葉の壁があればなおさら。だから、月に一度は労働時間を本人と一緒に確認する時間を持つ。「今月はここまで」と数字を見せながら伝えると、認識のズレはその場で解けます。手間に見えて、後の是正対応より、ずっと軽い負担です。
❓ よくある質問
Q1. 36協定は外国人従業員にも適用されますか?
A. はい、国籍に関係なく適用されます。時間外労働の上限も日本人と同じで、原則は月45時間・年360時間です。特定技能や技能実習でも変わりません。
Q2. 残業の上限は具体的に何時間ですか?
A. 原則は1か月45時間、1年360時間です。特別条項があっても年720時間、単月100時間未満、複数月平均80時間以内という上限を超えられません。加えて、原則の45時間を超えてよいのは年6か月までという回数制限もあり、特別条項は「例外」と押さえておくのが安全です。
Q3. 本人が「残業したい」と希望すれば上限を超えても良いですか?
A. いいえ、超えられません。本人の同意があっても、法律上の上限そのものは動きません。同意は残業を頼む前提であって、上限の免除ではないのです。
Q4. 口頭で説明していれば「説明した」ことになりますか?
A. 形式上はそうでも、伝わっていなければ実質的に不十分です。言葉の壁がある場合は、母語資料ややさしい日本語で本人が理解できる形にするのが安全です。
Q5. 上限を超えると、どんな罰則がありますか?
A. 企業が是正勧告のほか、6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金の対象になり得ます。処分の対象は原則として使用者側で、外国人本人ではありません。
Q6. 残業代(割増賃金)は外国人にも必要ですか?
A. 必要です。法定時間を超えた分は25%以上の割増賃金が発生します。これも国籍を問いません。説明時に割増の存在も必ず伝えておきましょう。
Q7. 労働時間の管理は何から始めればいいですか?
A. まず打刻や記録で時間を「見える化」することです。月45時間に近づいたらアラートを出す運用にすれば、超過の兆しを早めに止められます。
まとめ
この記事のまとめ:要点3つ
- 36協定と上限は国籍を問わず適用される。原則は月45時間・年360時間で、外国人だから緩くなることはありません。
- 「伝わる説明」が違反防止の要。上限・割増賃金・同意の3点を、母語ややさしい日本語で本人が理解できる形にすることが大切です。
- 記録と可視化で兆しを早く掴む。労働時間を見える化し、上限に近づいたら止める仕組みを整えておけば、トラブルの多くは未然に防げます。
制度は、完璧に暗記するより「伝わる形」に落とすことが先決です。自社の説明や管理のどこに穴があるか、現場に合わせて一緒に点検していきましょう。まずは話だけでも、お気軽にご相談ください。
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