特定技能外国人が「転職したい」と言い出したときの対応と事前対策

「特定技能は実習生と違って転職ができるから、すぐ他社に抜かれそうで怖い」とお悩みの方へ。転籍トラブルを未然に防ぐ最強の引き留め・予防策

特定技能の外国人が「転職したい」と言い出したときは、まず引き止めるかどうかを感情ではなく「在留期限・分野適合・賃金バランス」の3点で整理し、そのうえで退職・受入れ困難の届出と在留資格変更の流れを踏んでいくべきです。

一言で言うと、「転職をゼロにしよう」と力づくで抑えるのではなく、「辞めたくなる理由を減らしつつ、辞めるときは法令通りにきれいに手続きする」会社が、結果的に転籍トラブルも少なく、特定技能人材から選ばれ続けます。

弊社・株式会社エムティックでも、現場の声を踏まえながら、企業様と外国人材の双方にとって誠実な対応を一緒に考えてまいりました。

本記事では、その経験も踏まえた実務的な視点をお伝えします。


目次

この記事のポイント

  • 特定技能は制度上、同一分野内での転職が認められており、その際は在留資格変更許可申請や、旧・新所属機関双方の届出が必須です。
  • 正直なところ、「転職を禁止する」のは不可能なので、「なぜ転職したくなるのか」を分解し、賃金・業務内容・人間関係・将来像の4軸で“予防策”を早めに打つことが重要だと、弊社では考えています。
  • ケースによりますが、「もう辞めると決めた人」を無理に引き留めるより、「それでも残りたくなる環境をつくる」ことに投資した企業様ほど、長期定着率と紹介採用が伸びている傾向があります。

この記事の結論

  • 一言で言うと「特定技能の転職は“止めること”ではなく“準備と設計で減らすこと”が現実的な戦い方」だと、弊社では考えています。
  • 最も重要なのは、「転職したくなる理由」を、①賃金・待遇、②配属・業務内容、③コミュニケーション・相談窓口、④在留・キャリア不安の4つに分け、それぞれに対して“先回りの打ち手”を持っておくことです。
  • 失敗しないためには、「急な退職希望に感情で反応しない」「手続きの期限と書類を事前に整理しておく」「登録支援機関と役割分担を決めておく」ことが欠かせません。

「転職したい」と言われた瞬間の、あのイヤな沈黙

夜、ロッカー前で切り出される一言

残業が終わって、工場のシャッターが閉まりかけた19時過ぎ。

ロッカー前で帰り支度をしていると、特定技能のメンバーが少し間をおいてから、「あの…ちょっと相談があります」と目を伏せながら話しかけてくる。

その一言を聞いた瞬間、「もしかして転職の話か」と頭の片隅でよぎりつつ、検索履歴には「特定技能 転職 手続き」「特定技能 外国人 転職 できるか」というワードが並んでいる――そんな夜の空気を経験された企業様も多いはずです。

制度上、特定技能は「転職できる」前提で設計されている

法務省・出入国在留管理庁は、特定技能について「同じ特定産業分野・業務区分内であれば転職が可能」と明示しています。

転職する場合、本人は在留資格変更許可申請を行い、転職先企業は新たな雇用契約書や支援計画などの書類を整え、入管の許可を得る必要があります。

つまり、「制度として転職が認められている以上、“禁止”ではなく“どう付き合うか”を考えるのが現実的なアプローチ」だと、弊社では捉えています。

弊社が現場で見た「転職したい」の本音

以前、ある食品工場で、特定技能のメンバーが「転職したい」と打ち明けたケースがありました。

面談で理由を伺うと、「実は、同じ分野の別工場から時給+150円のオファーが来た」「夜勤固定がつらい」と、賃金とシフトの話が中心で、「会社が嫌い」ではないことが分かりました。

そのとき工場長が「全部は変えられないけど、夜勤を減らすことは考えてみよう」と提案し、結果的に転職は思いとどまった――その小さな方向転換の瞬間を、弊社担当者も隣で見ていました。


「転職したい」と言われたときの、具体的なステップ

① いきなり「ダメ」と言わず、理由を4つの箱に分けて聞く

特定技能の転職に関する解説では、「転職理由は複数の要因が絡むので、丁寧なヒアリングが大切」と指摘されています。

面談では、いきなり「ダメだ」と感情で止めるのではなく、次の4つに分けて聞き出すことを弊社ではおすすめしています。

  • 賃金・待遇(時給、手当、休みの取り方)
  • 業務内容・配属(やりたい仕事とのギャップ、危険・きつさ)
  • 人間関係・コミュニケーション(上司・同僚との衝突、相談できる人の有無)
  • 将来・在留への不安(在留期限、家族、キャリアプラン)

「実は、3つは我慢できるけど、1つだけどうしてもつらい」というケースも多く、その1つを動かせるかどうかが分かれ目になります。

② 引き止めると決めたときにできる“現実的なオファー”

  • 小さな賃金調整(時給+50〜100円、夜勤手当の見直し)
  • シフトの再配置(夜勤固定→交替制、残業時間の上限設定)
  • 配属変更(ライン変更、工程変更)

専門記事でも、「他社オファーと全く同じ条件を出すのは難しくても、“この会社で働き続ける理由”を一つ増やすオファーが有効」とされています。

正直なところ、全てを飲む必要はなく、「会社として動かせる範囲」と「本人が本当に譲れない点」の接点を探す作業だと、弊社では考えています。

③ それでも転職する場合の“きれいな別れ方”

転職が決まった場合、受入れ企業(旧所属機関)は、退職日から14日以内に「受入れ困難に係る届出」など所定の随時届出を行う義務があります。

本人は新しい受入れ企業と雇用契約を結び、在留資格変更許可申請を行い、許可が下りてから新しい職場で働く流れになります。

ケースによりますが、「最後まで法令通りに対応してくれた」という印象は、その人が同じ国の友人に会社を紹介してくれるかどうかにも直結します。


転職を“減らす”ための事前対策——予防が9割

① 賃金と待遇は「最低ライン」ではなく「納得ライン」で設計する

特定技能の解説では、「日本人と同等以上の報酬」が求められることが強調されています。

よくあるのが、「地域最低賃金+α」で形だけクリアし、結果的に他社と比べて見劣りしてしまうケースです。

正直なところ、時給で+50〜100円の差なら、1か月あたり1〜2万円。

その差で「3〜5年いてくれる中核メンバー」を確保できるなら、投資としては悪くないと弊社では考えています。

②「転職したくなる前」に話せる場を作る

転職手続きの解説では、「相談窓口がないと、不満が溜まってから急に退職に動きやすい」と指摘されています。

  • 月1回の1on1面談(日本人・特定技能ともに同じフォーマット)
  • 登録支援機関による定期面談での“第三者視点”
  • 匿名アンケートやLINEなどの相談チャネル

「実は、転職したいと言われる前に、1回愚痴をこぼせる場があれば違った」という声も、弊社の現場でよく耳にします。

③ キャリアと在留の“地図”を一緒に描く

専門記事では、「在留期限や特定技能2号への移行、母国への帰国時期などを共有しておくと、不安から来る転職希望が減る」とされています。

例えば、

  • 「あと何年日本で働きたいのか」
  • 「特定技能2号や別分野へのチャレンジをどう考えているか」
  • 「母国での目標(家・店・家族)」

こうした話を年1回でも言語化しておくと、「この会社であと何年がんばるか」の腹落ち度が変わってきます。


よくある質問(7問)

1. Q:特定技能の外国人は本当に自由に転職できますか?

A:同じ特定技能分野・業務区分内であれば転職可能ですが、在留資格変更許可申請が必要で、許可が下りるまで新しい職場では働けません。

2. Q:転職したいと言われたとき、会社がやるべき手続きは?

A:退職が決まれば、14日以内に受入れ困難・雇用契約終了の随時届出を入管へ行う義務があります。

3. Q:転職を引き止めるために、賃上げは必須ですか?

A:賃金だけが理由でない場合も多く、シフト調整や配属変更、相談環境の整備などで思いとどまるケースもあります。

4. Q:転職希望を無視したり、在留カードを取り上げたりしたらどうなりますか?

A:強制的な引き留めやパワハラ的対応はトラブル・訴訟リスクを高め、企業側の信頼や採用力を大きく損ないます。

5. Q:転職を前提に採用するのはリスクが高いですか?

A:高いですが、一定の離職は前提としつつ、“残りたくなる会社づくり”に投資する企業様ほど、紹介採用や評判でプラスに転じています。

6. Q:登録支援機関は転職防止にどこまで関わってくれますか?

A:定期面談や相談対応を通じて早期に不満をキャッチし、企業様と一緒に改善策を検討する役割が期待されています。

7. Q:転職された後の補充採用はどのくらい時間がかかりますか?

A:募集〜採用〜在留資格許可まで通常数か月かかるとされ、ラインへの影響も踏まえた人員計画が必要です。


まとめ

  • 特定技能の転職は制度上認められており、「ゼロにする」のではなく、「理由を減らし、手続きをきちんと行う」ことでトラブルを最小化する発想が現実的です。
  • 賃金・シフト・業務内容・コミュニケーション・在留不安を4つの箱に分解し、事前に打てる予防策を設計しておくことで、「転職したい」と言われる回数自体を減らせます。
  • 迷ったときは、一人で抱え込まず、弊社のような登録支援機関や専門家と“本音ベース”で状況を共有し、「どこまで譲るか」「どこからは送り出すか」の基準を一緒に決めておくのが、企業様と本人の双方にとって誠実な対応です。

迷っていらっしゃるなら、まず直近1年間で特定技能メンバーから出た不満や要望を3つだけ書き出し、「どの箱(賃金・業務・人間関係・在留不安)に当たるか」を弊社と一緒に整理してみませんか。

その3つのうち、今いちばん強く影響していそうなのは「賃金・シフト」「業務内容」「人間関係」のどれに近い感覚でしょうか。

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