特定技能外国人を雇える企業には、労働関係法令の遵守や受け入れ後の支援体制など、満たすべき要件があります。
特定技能で人を採るには、企業側にも資格が要ります。これが「受入れ機関(所属機関)」の要件です。要件は大きく分けて3つ。労働関係法令を守っていること、外国人への支援体制があること、そして欠格事由に当たらないこと。どれか一つでも欠けると、本人がどれだけ優秀でも在留資格の許可は下りません。
「うちみたいな小さな会社でも、特定技能って受け入れられるんですか?」。相談で一番多い問いです。「過去に労基署が入ったことがあるんだけど、それってアウト?」と声を落とす経営者もいます。実際のところ、要件は思ったほど特別なものではありません。多くは「まともに人を雇っている会社なら満たしているはず」の内容です。ただし、見落としがちな落とし穴もある。この記事を読めば、自社が基準を満たせそうかを、項目ごとに自分でチェックできるようになります。
この記事のポイント
- 受入れ機関の要件は「機関自体の基準」と「支援体制の基準」の2階建てです。前者は法令遵守や欠格事由、後者は義務的支援10項目を誰がやるかの話。混同すると判断を誤ります。
- 過去5年の労働・社会保険・入管法違反は欠格事由になり得ます。直近で是正勧告を受けた、社会保険に未加入の従業員がいる、といった状態は先に整える必要があります。
- 支援体制は「自社で全部やる」か「登録支援機関に委託する」かを選べます。自社単独が不安なら、義務的支援を丸ごと外部委託するのが現実的な選択肢です。
この記事の結論
- 一言で言うと、特定技能の受入れ機関の要件は「法令を守って人を雇える会社か」「外国人を支援できる体制があるか」の2点に集約されます。
- 最も重要なのは、欠格事由(過去5年の重大違反など)に該当しないこと。ここが引っかかると支援体制を整えても受け入れできません。
- 失敗しないためには、自社で抱え込まず、支援体制は登録支援機関への委託を含めて検討すること。基準充足のハードルが一気に下がります。
📌 受入れ機関「自体」が満たすべき基準とは
まず押さえるのは、会社そのものに課される基準です。出入国在留管理庁の運用要領では、受入れ機関に対して労働・社会保険関係法令の遵守や、欠格事由に当たらないことを求めています。ここは支援体制とは別の話。人の問題ではなく、組織の状態が問われます。
労働・社会保険・税の法令を守っているか
最初の関門が法令遵守です。労働基準法、最低賃金法、労働者派遣法などの労働関係法令、そして健康保険・厚生年金といった社会保険、さらに税金。これらを適正に処理していることが前提になります。
よくあるのが、パート・アルバイトの社会保険加入漏れです。「短時間だから入れていない」というケース。週の所定労働時間や月の賃金で加入義務が決まるため、本来加入させるべき人を外していると、ここで指摘されることがあります。特定技能の申請は、いわば会社の労務状態の健康診断のようなもの。普段の運用がそのまま見られます。
正直なところ、申請をきっかけに自社の労務を見直したら未加入者が見つかった、という相談は珍しくありません。けれど、これは前向きに捉えていい。先に整えてしまえば、特定技能に限らず会社全体のリスクが減ります。
過去1年に非自発的離職・行方不明を出していないか
意外と見落とされるのがこの項目です。受入れ機関の都合で外国人を解雇する「特定技能外国人と同種の業務に従事する労働者の非自発的離職」を、申請の直近1年以内に出していないこと。さらに、自社の責めに帰すべき事由で行方不明者を発生させていないこと。これらも基準に含まれます。
つまり、人をぞんざいに扱って辞めさせている会社は受け入れにくい、という設計です。「即戦力だけ欲しい」ではなく「ちゃんと雇い続けられるか」を見られている。ここは制度の思想が表れている部分だと感じます。
報酬は日本人と同等以上か
賃金の水準も要件です。特定技能外国人に支払う報酬額が、同じ業務に従事する日本人と同等以上であること。安く使うための制度ではない、という線がはっきり引かれています。
弊社の経験上、ここでつまずく企業はそう多くありません。ただ、手当の付け方や昇給の運用が日本人と外国人で違っていると、説明を求められることがあります。賃金規程に沿って、国籍で差をつけない。シンプルですが、ここが崩れると一気に難しくなります。ケースによりますが、就業規則と賃金台帳を申請前に一度見直しておくと安心です。
🔑 「欠格事由」と「支援体制」をどうクリアするか
会社の基準を満たしていても、欠格事由に該当すれば受け入れはできません。そしてもう一つの柱が、外国人への義務的支援を実施できる体制があるかどうか。この2つが受入れ機関の要件の後半です。
過去5年の違反歴が引っかかる「欠格事由」
欠格事由は、いわば「この状態だと受け入れさせません」というブラックリスト的な基準です。出入国在留管理庁が挙げる代表的なものとして、関係法令(労働・社会保険・入管法など)違反で罰金刑を受けてから5年を経過していない、技能実習の認定取消しを受けて5年以内、暴力団関係者がいる、といった項目があります。
「過去に労基署の是正勧告を受けたんですが、アウトですか?」とよく聞かれます。是正勧告そのものは行政指導であり、ただちに罰金刑=欠格事由になるわけではありません。ただし、放置して悪質と判断され送検・罰金まで至っていれば話は別です。ケースによりますので、自社の過去のいきさつが心配な場合は、申請前に専門家へ相談するのが安全です。
義務的支援10項目を実施できる体制があるか
特定技能1号の外国人を受け入れる企業には、「1号特定技能外国人支援計画」を作り、実行する義務があります。中身は10項目。事前ガイダンス、出入国時の送迎、住居確保・生活に必要な契約の支援、生活オリエンテーション、日本語学習の機会の提供、相談・苦情対応、日本人との交流促進、転職支援、定期的な面談と行政機関への通報。さらに、これらの支援を外国人が理解できる言語で行えること、が求められます。
ここが、人手も語学力も限られる中小企業にとって最大の壁です。「母国語で生活相談に乗れる人なんて社内にいないよ」という声は本当に多い。正直、自社単独でこの10項目を回すのは、専任担当を置けない会社にはかなり重い負担です。
自社支援か委託か——判断の3つの軸
ここで選択肢が2つあります。10項目を自社で実施するか、登録支援機関に委託するか。委託すれば、機関側の体制をもって支援要件を満たしたとみなされます。判断の軸は、おおむね次の3つです。
一つ、社内に外国人が理解できる言語で対応できる人材がいるか。二つ、相談・苦情に随時応じられる時間的余裕があるか。三つ、四半期ごとの行政報告まで自前で正確に回せるか。これらに不安があるなら委託が現実的です。受け入れが1〜2名で初めての場合、まず委託から始めて社内にノウハウが溜まってから内製を検討する、という会社が多い印象です。委託費は月額で外国人1人あたり1〜3万円台が一つの目安ですが、含まれる支援範囲で幅があります。1社だけで決めず、複数の登録支援機関を比較して内容と費用を見極めることをおすすめします。
❓ よくある質問
Q1. 設立したばかりの会社でも受入れ機関になれますか?
A1. なれる可能性はあります。要件は設立年数ではなく、法令遵守・支援体制・欠格事由の3点。ただし支援体制を自社で証明しづらいため、登録支援機関への委託が現実的です。
Q2. 過去に労基署の是正勧告を受けました。欠格事由ですか?
A2. 是正勧告だけなら、ただちに欠格事由にはなりません。問題は罰金刑などに至っているか。心配なら申請前に専門家へ相談を。曖昧なまま進めるのが一番危険です。
Q3. 義務的支援は必ず自社でやらなければいけませんか?
A3. いいえ。10項目すべてを登録支援機関に委託できます。委託すれば支援体制の要件を満たしたとみなされるため、社内に語学人材がいなくても受け入れは可能です。
Q4. 社会保険に未加入のパートがいます。このままだと無理ですか?
A4. ケースによりますが、加入義務がある人を外していると指摘の対象です。申請前に加入要件を確認し、整えてから進めるのが安全です。会社全体のリスクも下がります。
Q5. 賃金は日本人より安くてもいいですか?
A5. いいえ。同種業務の日本人と同等以上が要件です。安く雇うための制度ではありません。賃金規程に沿い、国籍で差をつけない運用が前提になります。
Q6. 派遣の形で特定技能外国人を受け入れられますか?
A6. 原則として直接雇用が必要です。例外は農業・漁業など一部分野のみ。一般的な製造・外食・介護では派遣不可と考えてください。詳細は分野ごとの運用要領で要確認です。
Q7. 要件を満たしているか、自社だけで判断できますか?
A7. チェックリストである程度は可能ですが、欠格事由の解釈は専門的です。実は微妙なケースが多く、最終判断は登録支援機関や行政書士に確認するのが確実です。
まとめ
この記事のまとめ:要点3つ
- 受入れ機関の要件は「法令遵守」「欠格事由なし」「支援体制」の3本柱です。多くはまともに人を雇う会社なら満たせる内容ですが、社会保険の加入漏れや過去の違反歴が落とし穴になります。
- 欠格事由(過去5年の罰金刑・認定取消しなど)に該当すると、他をクリアしても受け入れできません。心配な履歴があるなら、申請前に専門家へ確認するのが安全です。
- 義務的支援10項目は登録支援機関に丸ごと委託できます。語学人材や専任担当がいない中小企業ほど、委託から始めるのが現実的な選択肢になります。
自社が基準を満たせるか、一人で抱えて悩む必要はありません。まずは「うちの場合どうなる?」を整理するところから。気になる点があれば、話だけでもお聞かせください。御社の状況に合わせて、受け入れの可否と進め方を一緒に確認します。
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