制度改正でどう変わる?技能実習の課題とこれからの外国人採用
技能実習制度は、2027年4月以降「育成就労制度」に段階的に置き換わります。
2027年4月1日の施行時に技能実習中の人などは、経過措置により技能実習を継続できます。施行前に技能実習計画の認定を申請し、原則2027年6月30日までに実習を開始する場合なども対象です。2号から3号への移行には、施行時点で2号を1年以上行っていることなどの条件があります。一律に2030年で全員終了する仕組みではなく、個々の計画と要件で確認します。
企業側は、特定技能1号への移行を前提にした育成計画、転籍(職場変更)への対応、コンプライアンス強化という3点を軸に採用戦略を組み直す必要があります。
この記事のポイント
- 移行は2027年4月1日を起点としますが、技能実習を続けられる範囲は個々の経過措置の条件によります。一律に2030年で終了するとは判断できません。
- 育成就労は「特定技能1号への橋渡し制度」として設計され、採用=3〜5年で戦力化・定着させる前提に変わります。
- 現時点(2026年)で新規採用を止める必要はなく、「いつまで技能実習で採るか」「どの職種から育成就労前提に切り替えるか」の設計がカギです。
正直なところ、制度名が変わるだけだと思っていた経営者の方も多い印象です。
ですが、厚生労働省や法務省の資料を読み込むと、「人材の囲い込み」ではなく「育成とキャリア」を重視する設計になっており、実は受け入れ企業側のスタンスがかなり試される改正内容になっています。
ここから先は、
- 育成就労制度で何が変わるのか
- 移行は2027年4月1日を起点としますが、技能実習を続けられる範囲は個々の経過措置の条件によります。一律に2030年で終了するとは判断できません。
を、現場で外国人材と向き合ってきた当社目線でお伝えします。
この記事の結論
- 一言でいうと、「短期の人手不足対策」から「特定技能まで見据えた人材育成」へ発想を切り替えた会社ほど、制度改正の恩恵を受けやすくなります。
- 最も重要なのは、「育成就労(3年)」→「特定技能1号(最大5年)」という8年前後のキャリアを前提に、職種・シフト・教育担当を設計し直すことです。
- 失敗しないためには、「今いる技能実習生をどうするか」と「今後、どの職種をどの制度で採用するか」を、2027年の施行前にシミュレーションしておくことが不可欠です。
そもそも技能実習が見直される本当の理由
表向きには「制度目的の明確化」「人権侵害問題への対応」といったキーワードが並びます。
よくあるのが、「本当は日本で長く働きたいのに、3年・5年で帰国しなければいけない」という実習生の声です。
監理団体や受入企業の一部が制度の信頼を大きく損ねた経緯があります。
この「目的と実態のズレ」「人権への批判」を背景に、政府は技能実習制度を発展的に解消し、新たに「育成就労制度」を創設する方向に舵を切った、という流れです。
「育成就労制度」は何を変えようとしているのか
育成就労制度は、「特定技能1号水準の技能を有する人材の育成」と「人材確保」を目的とした在留資格です。
つまり、最初から「日本で一定期間働き、特定技能に移行して戦力として定着してもらう」ことを前提に設計されています。
主なポイントは大きく3つです。
- 在留目的の明確化:技能実習のような「国際貢献」ではなく、「人材育成・人材確保」を明文化。
- 在留期間の整理:育成就労は原則3年以内、その後は特定技能1号への移行を想定。
- 転籍(職場変更)の緩和:一定条件のもとで、外国人本人の意向による職場変更を認める方向。
正直なところ、企業側から見ると「辞められやすくなるのでは?」という不安は当然です。
実は、この点こそが制度設計の肝です。
「待遇や育成の姿勢が見える会社には人が集まりやすくなり、そうでない会社は人材確保が難しくなる」という、ある意味とてもシンプルな市場原理が働くようになります。
時給1,050円スタートで、N3相当の日本語と一定の生産性を満たしたら1年後に1,150円、その後リーダー業務ができれば1,250円という仕組みです。
育成就労制度のもとでは、こうした取り組みをしているかどうかが、採用競争力に直結していきます。
企業が本当に不安に感じている「3つのポイント」
顕在ニーズとしては「制度がどう変わるのか知りたい」という情報収集です。
1. 今いる技能実習生はどうなるのか
移行は2027年4月1日を起点としますが、技能実習を続けられる範囲は個々の経過措置の条件によります。一律に2030年で終了するとは判断できません。
ケースによりますが、現在の技能実習2号・3号への移行など、現行ルールも一定期間継続される方向が示されています。
2. 2026〜2027年に新規採用を止めたほうがいいのか
回答はいつも同じです。
制度改正を踏まえて、
- 技能実習として採用するのは4名まで
- うち2名は特定技能1号への移行を明確に前提としたキャリアパスを提示
- 残り2名は、育成就労制度が始まったタイミングで追加採用する枠として残す
このように、「今」と「数年先」をつないだ採用計画にすることで、制度変更への不安はかなり減らせます。
3. コストは増えるのか、減るのか
在留資格の変更・更新手数料の上限引き上げなど、入管法改正による費用の増加が見込まれています。
2026年3月の改正案でも1万円から最大10万円への上限引き上げが議論されています。
よくあるのが、「細かい手数料は監理団体や行政書士に任せていて、総額がいくらかかっているのか把握していない」というケースです。
今のうちに、1人あたりの採用〜在留更新〜住居・生活サポートまでの年間コストを洗い出しておくことをおすすめします。
技能実習と育成就労・特定技能の違い
まずは、制度ごとの違いを整理しておきます。
| 制度 | 主な目的 | 在留期間の目安 | 転籍の扱い |
|---|---|---|---|
| 技能実習 | 技能移転(国際貢献) | 最長5年 | 原則不可(例外あり) |
| 育成就労(新制度) | 人材育成・人材確保 | 原則3年以内 | 一定条件で認める方向 |
| 特定技能1号 | 即戦力としての人材確保 | 通算最大5年 | 転職は可能だが要件あり |
技能実習から育成就労への切り替えで一番大きいのは、「最初から特定技能への移行を前提としたステップ」として制度が位置づけられることです。
つまり、受入企業としては「3年かけて育てて、さらに数年単位で働いてもらう」前提で設計しなければ、採用コストを回収しにくくなります。
ここで、現場の会話をひとつ紹介します。
このやりとりを聞いたとき、「制度改正って、書類の話じゃなくて、現場の期待値の話なんだ」と感じました。
よくある失敗パターンと、その回避策
制度が変わるタイミングほど、「やってはいけない定番の失敗」が増えます。
1. 「とりあえず様子見」で採用を止める
採用を止めた場合の影響は、各社の欠員や採用計画によって異なります。施行前から、既存の技能実習計画の経過措置と、育成就労・特定技能など今後使う制度を確認してください。
外国人採用を止めるのではなく、「どの制度で何人採るか」を再設計するのがポイントです。
2. 制度の名前だけ変えて、育成計画を変えない
3. 情報が錯綜する中で、現場への説明が遅れる
制度の変更点を母国語も交えて説明し、「あなたの在留はこのスケジュールで問題ない」と具体的に伝えるだけで、離職の不安は大きく下げられます。
ケースによりますが、「全員を特定技能まで育てる」必要はありません。
事業計画やポジション構成に応じて、
- 3年で帰国前提のポジション
- 特定技能まで見据える中核ポジション
を分けて設計することが、コストとリスクを最適化するうえで重要です。
「今から3年」で差がつく現場の具体策
制度が本格的に動き出す2027年を待ってから動くのでは、正直遅いです。
むしろ、2026〜2028年の3年間で何をやるかが、中長期の人材戦略を決めます。
実際にエムティックとして支援してきた中で、成果が出やすかった具体策をいくつか紹介します。
1人あたりの採用〜育成コストを「見える化」する
例:採用・渡航費用40万円、監理費用年間36万円、社宅補助年間24万円など、合計で3年トータル150〜200万円。
この数字が見えている会社ほど、「3年でどこまで戦力化する必要があるか」「特定技能に進んでもらうべきか」の判断がしやすくなります。
日本語と技術のW評価シートを作る
現場リーダー向けの「ミニマム制度研修」を行う
法改正の細かい条文を覚える必要はありません。
しかし、「育成就労→特定技能」という流れだけは、現場リーダーが理解しておく必要があります。
こうした取り組みは、一見すると面倒に見えます。
ただ、育成就労制度のもとでは、「教育に投資した会社」と「なんとなく現場任せにした会社」で、5年後の戦力と採用単価に大きな差がつくと感じています。
よくある質問(FAQ)
Q1. 技能実習制度は、いつ完全になくなりますか?
移行は2027年4月1日を起点としますが、技能実習を続けられる範囲は個々の経過措置の条件によります。一律に2030年で終了するとは判断できません。
Q2. 今いる技能実習生は、全員育成就労に切り替える必要がありますか?
A. 施行後も一定期間は現行ルールが適用され、全員が自動的に切り替わるわけではありません。
ケースによりますが、個別に在留資格の更新・変更を検討することになります。
Q3. 育成就労と特定技能1号の違いは何ですか?
A. 育成就労は「育成期間」としての3年が中心で、その先の特定技能1号(最大5年)への移行を前提としたステップである点が大きな違いです。
Q4. 転籍(職場変更)は、本当に自由になるのでしょうか?
A. 方針としては緩和される方向ですが、完全な自由ではなく、一定の要件や手続きが設けられる見込みです。
詳細は今後の政省令で明確になります。
Q5. コストは今より増えるのでしょうか?
A. 在留資格変更・更新手数料の上限引き上げなど、制度改正に伴い一部コスト増が想定されています。
一方で、長期的な定着が進めば、採用単価を薄められる可能性もあります。
Q6. 2026〜2027年は、新規採用を控えたほうが安全ですか?
A. 一律に控える必要はありません。
むしろ、今のうちに3〜5年先を見据えた採用・育成計画を立てた企業ほど、移行期でも安定した人材確保ができています。
Q7. 中小企業でも、育成就労制度・特定技能に対応できますか?
A. 可能です。
ただし、自社だけで全てをカバーするのは負荷が大きいため、監理団体・登録支援機関・専門家と役割分担をしながら進めるのが現実的です。
Q8. これから初めて外国人採用を検討する場合、何から始めるべきですか?
A. いきなり制度の細部から入るのではなく、「どの職種を、何年スパンで、どのレベルまで育てたいか」を明文化し、そのうえで制度と受入スキームを選ぶのがおすすめです。
まとめ
最後に、ポイントを整理します。
- 移行は2027年4月1日を起点としますが、技能実習を続けられる範囲は個々の経過措置の条件によります。一律に2030年で終了するとは判断できません。
- 育成就労は、「3年の育成」→「特定技能1号での活躍」という流れを前提にした制度であり、短期の人手不足対策だけを目的にするとミスマッチが大きくなります。
- 成功している企業ほど、「制度変更=チャンス」と捉え、採用数・職種・教育体制・キャリアパスを3〜5年スパンで設計し直しています。
こういう会社は、今すぐ専門家に相談すべきです。
- すでに技能実習生や特定技能人材が10名以上いて、今後も外国人頼みの体制になりそうな会社
- 2027年以降も、製造・物流・介護・外食などで継続的に採用が必要な会社
逆に、「今は2〜3名しかいないが、今後も数を増やす予定はない」という場合、まだ大きく体制を変える必要はありません。
この状態ならまだ間に合うので、まずは1人あたりのコストと育成計画を“見える化”するところから始めてみてください。
迷っているなら、「自社の3年後・5年後の人員構成」を一度紙に書き出してみるのがおすすめです。
そこに外国人材をどう位置づけるのかが見えてきた瞬間、制度改正のニュースが、単なる不安材料ではなく、戦略を組み直すきっかけに変わっていきます。
このテーマについて、自社の状況を踏まえた具体的なシミュレーションが必要であれば、「外国人の人数」と「主な職種」だけ教えていただければ、3〜5年のモデルケースを一緒に組み立てます。
外国人採用・人材活用のご相談
自社に合う採用方法を、
条件の整理から相談しませんか。
派遣・人材紹介・特定技能の支援について、必要な人材と受け入れ体制を整理しましょう。採用方法が決まっていない段階でも、現在のお困りごとをお知らせください。
- 必要な人数・開始時期を相談したい
- 費用や対応範囲を確認したい
- 受け入れ準備を整理したい
お問い合わせの際は「業務内容・勤務地・人数・希望時期」をお知らせいただくと、確認がスムーズです。

