派遣された外国人スタッフが現場でケガをしたら、責任は派遣元と派遣先のどちらにあるのか。
外国人材の派遣で、最も多い不安が「事故の責任」です。結論から言います。労災保険の手続きは派遣元、現場の安全衛生は派遣先。この役割分担が基本です。事故が起きても、どちらか一方が全部背負うわけではありません。責任は分担されます。だからこそ、線引きを知らないと現場が止まる。
「うちの工場でケガをさせたら、全部こっちの責任になるのでは?」「言葉が通じない相手に、安全教育なんてできるのか」。導入を検討する経営者から、こうした声を本当によく聞きます。正直なところ、ここが曖昧なまま受け入れて、いざ事故が起きてから慌てる企業は少なくありません。この記事では、派遣元と派遣先で責任がどう分かれるのか、労災が起きたときに誰が何をするのか、そして言葉の壁による事故をどう防ぐのかを、現場の声を交えて整理します。読み終わるころには、自社が何を準備すべきかが見えてくるはずです。
この記事のポイント
- 労災保険の給付手続きは派遣元(派遣会社)の役割です。 保険料を納め、被災時の申請窓口になるのは雇用主である派遣元。派遣先が直接労災申請をするわけではありません。
- 現場の安全衛生管理は派遣先の責任です。 実際に作業させる場所を管理しているのは派遣先。設備の安全確保や作業中の指示、危険の周知は受け入れ企業が担います。
- 言葉の壁は最大の事故リスクです。 「分かりました」が分かっていない。この行き違いが事故を生みます。多言語での教育とフォロー体制が、安全の決め手になります。
この記事の結論
- 一言で言うと、責任は「労災保険=派遣元」「現場の安全=派遣先」で分担される、というのが基本構造です。
- 最も重要なのは、安全配慮義務は派遣元と派遣先の双方が負うという点です。どちらかに丸投げはできません。
- 失敗しないためには、事故時の連絡フローを契約前に取り決め、安全教育を母国語で行える派遣会社を選ぶことです。
⚖️ 労災と安全衛生、責任は派遣元と派遣先でこう分かれる
外国人材派遣の安全管理は、「誰が雇用主か」と「誰が現場を管理しているか」を分けて考えると整理できます。ここを押さえれば、責任の所在で迷うことはなくなります。
労災保険の手続き窓口は派遣元(雇用主)
派遣スタッフの雇用主は、あくまで派遣会社(派遣元)です。給与を払い、社会保険や労災保険に加入させているのも派遣元。ですから、現場でケガをした場合でも、労災保険の給付手続きは派遣元が窓口になります。被災した本人が労災を申請する際、書類を整え、労働基準監督署とやり取りするのは派遣会社の仕事です。
労働者派遣法では、労働基準法上の使用者責任の多くを派遣元が負うと定めています。労災保険料を納めているのも派遣元です。「うちの現場で起きた事故だから、うちが労災申請する」と思い込んでいる受け入れ企業がありますが、実はそこは派遣会社の担当。ここを誤解していると、被災者の手続きが宙に浮きかねません。
ただし、派遣先がまったく無関係というわけではない。事故の状況を派遣元に正確に伝え、現場の証拠や経緯を共有する協力義務はあります。労災の申請には、現場で何が起きたかの情報が欠かせないからです。
現場の安全衛生を守るのは派遣先の責任
一方で、実際にスタッフが働く現場を管理しているのは派遣先です。労働安全衛生法では、現場の安全衛生について、派遣先にも多くの義務を課しています。機械の安全装置、作業手順の周知、危険箇所の表示、保護具の支給――こうした「現場での安全確保」は、受け入れ企業が担う部分です。
たとえば食品工場のスライサーやホテルの厨房、清掃現場の高所作業。危険が伴う作業をさせる以上、派遣スタッフにも日本人と同じ安全教育と配慮が必要です。「派遣だから、安全は派遣元任せでいい」という考えは通用しません。現場を支配しているのは派遣先なのですから。
弊社の経験上、ここを軽く見て「派遣スタッフだから簡単な作業だけ」と説明を省く現場ほど、ヒヤリハットが多い。逆に、最初の数日を丁寧に教えた現場は事故がぐっと減ります。
「安全配慮義務」は派遣元と派遣先の両方が負う
ここが一番大事なところです。安全配慮義務――労働者が安全に働けるよう配慮する義務は、派遣元と派遣先の双方が負います。どちらか一方に丸投げはできません。
派遣元は「適切な現場に派遣しているか」「無理な業務を負わせていないか」を配慮する。派遣先は「現場で危険にさらしていないか」を配慮する。役割は違いますが、両方が責任を持つ構造です。実際に事故が起きて損害賠償が問われる場面では、派遣元・派遣先のどちらの配慮が足りなかったかが争点になることもあります。
「正直なところ、責任を相手に押し付け合っても意味がないんです」。これは、ある製造業の労務担当者と話したときに出た言葉です。事故を防ぐには両者の連携しかない、と。まさにその通りだと思います。
🛡️ 事故を防ぎ、起きたときに慌てないための実務
責任の分担が分かっても、実際に事故が起きたときの動き方を決めていなければ意味がありません。ここからは、防止と対応の両面で、受け入れ企業がやっておくべきことを具体的に見ていきます。
言葉の壁による事故を防ぐ多言語の安全教育
外国人材の現場で、事故の引き金になりやすいのが言葉の壁です。よくあるのが、危険を伝えたつもりで伝わっていないケース。日本語で「ここは触るな」と言っても、「分かりました」と返事だけして意味を理解していない。これが本当に多い。
ある倉庫の現場責任者は、こう話してくれました。「フォークリフトの動線を口頭で説明したら、全員うなずくんですよ。でも実際は半分も分かってなかった。あの時、ヒヤッとしました」。それ以来、その現場では床に色テープで安全通路を引き、多言語のピクトグラムを貼ったそうです。事故が減ったのはもちろん、教育の時間も短くなったといいます。
エムティックでは、日本国内に在住し一定の日本語力を持つ在留外国人に特化していますが、それでも安全に関わる部分は母国語や図解で重ねて伝えるようにしています。多言語・多国籍対応のフォロー体制を持つ派遣会社を選ぶこと。これが、言葉の壁による事故を防ぐ近道です。
事故が起きたときの対応フローを契約前に決める
事故は起きないに越したことはありませんが、ゼロにはできません。だからこそ、起きたときの動き方を契約前に決めておくことが大切です。
押さえておきたい対応フローは、ざっくり次の流れです。まず①被災者の救護と安全確保、②派遣元への即時連絡、③労働基準監督署への報告(一定の労災は報告義務あり)、④派遣元による労災申請のサポート、⑤再発防止策の協議。この中で「誰が・いつ・どこへ連絡するか」を、あらかじめ派遣会社と取り決めておくのです。
ケースによりますが、夜間や休日に事故が起きたときの連絡先を決めていない企業は意外と多い。緊急時に「派遣元の担当者と連絡が取れない」では、対応が後手に回ります。24時間の緊急連絡体制があるかどうかは、派遣会社選びの判断材料の一つにしてください。
安全面で派遣会社を見極める5つの基準
安全を任せられる派遣会社かどうかは、次の5つで見極められます。1社で即決せず、複数社で比べてみてください。
- ①労働者派遣事業の許可を正式に持っているか(許可番号で確認できます)
- ②多言語での安全教育・フォロー体制があるか
- ③事故時の緊急連絡体制(夜間・休日含む)が明確か
- ④マージン率など費用の内訳を公開しているか(情報公開の姿勢の表れ)
- ⑤現場への定期フォローや面談を行っているか
エムティックは派遣・職業紹介・登録支援の3つの許認可をワンストップで保有し、マージン率も23.8%と公開しています。とはいえ、まずはこの5つの基準で各社を並べて比べること。自社の現場に合うかどうかは、比較して初めて見えてきます。
❓ よくある質問
Q1. 派遣スタッフが現場でケガをしたら、労災申請は派遣先がするのですか?
A. いいえ、労災保険の給付手続きは雇用主である派遣元(派遣会社)が行います。派遣先は事故状況を正確に派遣元へ伝える協力をします。
Q2. 派遣先には安全管理の責任はないのですか?
A. あります。労働安全衛生法により、現場の安全衛生管理は派遣先の責任です。設備の安全確保や作業中の危険周知は受け入れ企業が担います。
Q3. 安全配慮義務はどちらが負いますか?
A. 派遣元と派遣先の双方が負います。役割は分かれますが、どちらか一方に丸投げはできません。連携が前提です。
Q4. 言葉が通じない相手に、安全教育はできるのでしょうか?
A. 多言語マニュアルや図解、色分け表示を使えば十分可能です。母国語で重ねて伝える体制を持つ派遣会社を選ぶのが現実的です。
Q5. 事故が起きたとき、まず何をすればいいですか?
A. ①被災者の救護、②派遣元への即時連絡、③必要に応じ労基署へ報告の順です。連絡フローは契約前に取り決めておきましょう。
Q6. 安全教育の費用は派遣先と派遣元どちらが負担しますか?
A. 現場固有の安全教育は派遣先が、一般的な労働安全の基礎教育は派遣元が担うのが一般的です。契約時に分担を確認してください。
Q7. 安全に強い派遣会社はどう見極めればいいですか?
A. 派遣の許可番号、多言語フォロー、緊急連絡体制、費用の公開、定期面談の5点で確認します。1社即決せず複数社で比較しましょう。
まとめ
この記事のまとめ:要点3つ
- 労災保険の手続きは派遣元、現場の安全衛生は派遣先が担うのが基本構造です。どちらか一方が全責任を背負うわけではありません。
- 安全配慮義務は派遣元と派遣先の双方が負います。 責任の押し付け合いではなく、連携してこそ事故を防げます。
- 言葉の壁が最大の事故リスクです。多言語の安全教育と、事故時の連絡フローの事前取り決めが、安全な受け入れの鍵になります。
安全管理は、知らないと不安ですが、線引きさえ分かれば過度に恐れる必要はありません。まずは自社の現場でどんな危険があるか、そこをどう伝えるかを一度整理してみてください。エムティックでは、安全衛生の分担や事故時の体制についてのご相談も承っています。「導入するかどうかはまだ分からないけれど、話だけ聞いてみたい」――そんな段階で構いません。お気軽にお問い合わせください。
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