特定技能の支援を委託から自社支援へ切り替えたいが、何を基準に判断すればよいか悩んでいませんか?
特定技能の義務的支援は、登録支援機関への委託から自社支援へ切り替えられます。ただし全社に向くわけではありません。判断の軸は3つ。支援体制・コスト・リスクです。この順で自社に当てはめて考える。答えは会社ごとに違います。委託費を減らしたいだけで踏み切ると、逆に負担が増える場合もあります。
「毎月の委託費がもったいない」「支援くらい自社でできるのでは」。そんな声、よく聞きます。一方で「途中で切り替えて大丈夫なのか」「基準を満たせず不許可になったら怖い」という不安も同じくらい多いですね。正直なところ、この判断は数字だけでは決まりません。この記事では、切り替えを検討する企業が確認すべき判断基準と、自社支援に必要な要件、そして手続きの流れを整理します。読み終える頃には、自社が今切り替えるべきか、まだ委託を続けるべきか、その線引きが自分で引けるようになります。
この記事のポイント
- 判断軸は「支援体制・コスト・リスク」の3つ。委託費の節約だけで決めず、この順で自社の状況を点検します
- 自社支援には支援責任者・担当者の選任など要件がある。義務的支援10項目を自前で回せる体制が前提です
- 切り替えは在留期間の途中でも可能。ただし支援計画の変更届など、地方出入国在留管理局への手続きが必要です
この記事の結論
- 一言で言うと、自社支援への切り替えは「コスト削減策」ではなく「体制構築の意思決定」です
- 最も重要なのは、義務的支援10項目を年間を通じて安定して回せる人と仕組みがあるかどうか
- 失敗しないためには、1社の言い分だけで即決せず、委託継続・一部委託・全部自社の3案を並べて比較すること
🔑 委託から自社支援へ切り替える判断基準
特定技能の受け入れでは、義務的支援の実施が企業に課されます。事前ガイダンス、生活オリエンテーション、公的手続きの同行、相談対応、定期面談など、出入国在留管理庁が定める支援は10項目に及びます。これを自社で満たせない場合、登録支援機関へ委託するのが一般的です。では、いつ自社支援へ切り替えるべきか。ここでは体制・コスト・リスクの3つに分けて基準を示します。どれか1つでも欠けると、切り替えは早すぎる、と考えてください。
支援体制で判断する
最初の基準は、支援を回す「人と仕組み」があるかどうかです。義務的支援には、母国語での相談対応や3か月に1回以上の定期面談が含まれます。ここで問われるのは、担当者の語学力だけではありません。担当者が急に辞めたら支援が止まる、という属人化した状態では、自社支援は続きません。
先日も、ある食品工場の人事担当の方からこんな相談を受けました。「ベトナム語が話せる社員が1人いるので自社でやれると思うんです」。気持ちは分かります。ただ、その方が産休や退職になったとき、支援の代役はいますか、とお聞きすると黙ってしまわれました。よくあるのが、この一点です。支援体制とは、1人の頑張りではなく、複数名で穴を埋められる仕組みのこと。ここが整っていない段階では、まだ委託を続けたほうが安全でしょう。
コストで判断する
2つ目はコストです。登録支援機関への委託費は、地域や支援内容によりますが、1人あたり月2万〜3万円が一つの相場とされています。仮に5人受け入れていれば、年間で120万〜180万円ほど。この数字だけ見ると、自社支援に切り替えれば丸ごと浮くように思えますね。
ですが、実はここに落とし穴があります。自社支援では、担当者の人件費、通訳費、相談窓口の運用、面談記録の管理といった見えにくいコストが発生します。弊社の経験上、受け入れ人数が2〜3人程度だと、自社化しても人件費のほうが委託費を上回るケースが少なくありません。逆に、10人、20人と規模が大きくなるほど、1人あたりの支援コストは下がり、自社化の妙味が出てきます。つまりコストは「委託費の総額」ではなく「1人あたりの実質負担」で比べるのが正解です。
リスクで判断する
3つ目はリスク、つまり法令順守と継続性です。義務的支援を怠ると、出入国在留管理庁の指導や、最悪の場合は受け入れ機関としての基準不適合につながります。委託していれば、この実務リスクの多くを専門機関が担ってくれます。自社支援に切り替えると、その責任が自社に戻る。これを軽く見てはいけません。
ケースによりますが、支援記録の作成や届出のミスは、悪意がなくても起こります。切り替え直後は特に、慣れない書類でつまずきがちです。ここで判断材料になるのが、「不備があったとき、誰が気づき、誰が直せるか」という問いです。社内に在留資格の知識を持つ人がいない、外部に気軽に聞ける相手もいない。そんな状態でリスクだけ自社に移すのは、正直おすすめしません。まずは一部委託という中間案も検討する価値があります。
🤝 自社支援に必要な要件と切り替え手続きの流れ
判断基準を点検して「自社化に進む」と決めたら、次は要件と手続きです。自社支援は、届出を出せば自動的にできるわけではありません。受け入れ機関自身が「支援を適正に実施できる体制」を満たす必要があります。ここでは要件、手続きの流れ、そして切り替え前の最終確認を順に見ていきます。焦らず一つずつ潰していきましょう。
自社支援に求められる要件
自社支援(受け入れ機関による支援)を行うには、いくつかの体制要件を満たす必要があります。中心となるのが、支援責任者と支援担当者の選任です。この2つの役割は兼任も可能ですが、支援に関わる立場として適切な人を社内に置くことが求められます。
加えて、過去2年間に中長期在留者の受け入れ実績があること、または支援業務に一定期間従事した経験者を担当に据えること、といった「支援を担う適格性」も問われます。さらに、外国人が理解できる言語で相談に応じられる体制も必須です。ここが多くの企業にとって最初の壁になります。実績がまったくない状態からいきなり全項目を自社で、というのは現実にはハードルが高い。だからこそ、初回は委託から始め、実績を積んでから自社化する企業が多いのですね。
切り替え手続きの流れ
要件を満たせる見込みが立ったら、手続きに入ります。大まかな流れはこうです。まず、支援体制を社内に整える。責任者・担当者を決め、相談対応や面談の運用を固めます。次に、これまで登録支援機関に委託していた支援計画を、自社実施の内容に見直す。ここで支援委託契約の解除時期も調整します。
そのうえで、支援計画の変更にあたる届出を、管轄の地方出入国在留管理局へ提出します。特定技能では、支援を委託から自社実施へ変える場合、支援計画の変更に関する届出が必要になるためです。届出には、新しい支援体制を示す書類が伴います。ある介護施設の事務長さんは「委託解除の日と、自社支援の開始日に空白ができないよう並行して進めたのが一番気を使った」と話していました。まさにその通りで、支援が途切れる期間を作らないことが、この手続きの肝です。最新の必要書類や様式は、出入国在留管理庁の公表内容で必ず確認してください。
切り替え前に確認したいこと
最後に、踏み切る前の確認です。3つだけ挙げます。1つ目、支援担当者が変わっても支援が続く仕組みがあるか。2つ目、母国語での相談対応を年間通して維持できるか。3つ目、届出や記録の不備に社内または外部で気づける体制があるか。
この3つに自信を持って「はい」と言えないなら、全部自社ではなく、一部だけ自社で担い残りは委託する形も選べます。私たちのように派遣・紹介・登録支援を1社で持つ会社に相談すれば、「まず定期面談だけ自社で、公的手続き同行は委託」といった段階的な移行の設計もしやすくなります。切り替えは一度きりの決断ではなく、体制の成長に合わせて動かしていくもの。そう捉えると、判断がぐっと楽になります。
よくある質問
Q1. 委託から自社支援へは在留期間の途中でも切り替えられますか?
A. 切り替えられます。次の更新を待つ必要はありません。ただし支援計画の変更にあたる届出が必要で、支援が途切れない日程調整が前提です。
Q2. 自社支援にすると、義務的支援はすべて自前でやらないといけませんか?
A. いいえ。10項目のうち一部だけを自社で行い、残りを委託する形も選べます。まず面談から自社化する企業も多いです。
Q3. 委託費はどのくらい浮きますか?
A. 委託費は1人あたり月2万〜3万円が相場の一つです。ただし自社の人件費や通訳費が新たに発生するため、少人数だと逆に高くつく場合もあります。
Q4. 支援担当者に語学力は必須ですか?
A. 担当者本人が話せる必要はありません。外国人が理解できる言語で相談に応じられる体制があればよく、外部通訳の活用も認められます。
Q5. 自社支援にすると罰則リスクは増えますか?
A. 実務責任が自社に戻る分、届出漏れや支援不備のリスクは上がります。だからこそ、気づいて直せる仕組みを先に作ることが重要です。
Q6. 受け入れ実績がなくても自社支援はできますか?
A. 支援を担う適格性の要件があり、実績ゼロからは難しい場合があります。多くの企業は委託で実績を積んでから自社化しています。
Q7. 切り替えで迷ったら、まず何をすべきですか?
A. 委託継続・一部自社・全部自社の3案を並べ、体制とコストとリスクで比較してください。1社の言い分だけで即決しないことが失敗を防ぎます。
まとめ
この記事のまとめ:要点3つ
- 切り替えの判断軸は「支援体制・コスト・リスク」の3つ。委託費の節約だけを理由にせず、この順で自社を点検することが出発点です
- 自社支援は体制構築の意思決定。支援責任者・担当者の選任や相談対応の維持など、10項目を安定して回せる仕組みが前提になります
- 手続きは在留期間の途中でも可能だが、支援を途切れさせないことが肝。全部自社にこだわらず、一部委託という中間案も有力です
切り替えは急ぐほど失敗しやすい判断です。まずは自社の受け入れ人数と体制を紙に書き出し、3案を並べて比べてみてください。それでも線引きに迷うなら、無理に一人で抱え込む必要はありません。派遣・紹介・登録支援を1社で扱う私たちは、段階的な自社化の設計もお手伝いできます。売り込むつもりはありません。「うちはまだ委託を続けたほうがいいのか」を確かめる、その相談だけでも構いません。まずは話だけでも、気軽に声をかけてください。
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