企業様インタビューVol.4 『日本語レベルだけで判断せず個人のスキル・人間性を評価して採用したい』
JR有楽町駅、有楽町線の銀座一丁目駅から京橋方面に5分ほど歩いたところにある、旬薫のさかなと野菜を楽しめる居酒屋『金の独楽(こま)』。細長いビルの入り口には、たくさんの日本酒・焼酎の瓶が賑やかに飾られています。
銀座、有楽町という土地柄か、金の独楽には毎日のように外国人のお客様がいらっしゃるとのこと。この都心の居酒屋で活躍する外国人アルバイトについて、統括店長様にお話を伺ってきました。
※2019年6月27日取材
統括店長様インタビュー
ーはじめまして。本日はお時間いただきありがとうございます。まずは自己紹介とお店について教えていただいて良いでしょうか?
はじめまして。金の独楽の統括店長を務めております。本日はよろしくお願いします。
金の独楽は、豊洲から仕入れた新鮮な魚介と、野菜ソムリエ厳選のフレッシュな旬野菜を使った料理、地酒や本格焼酎を豊富に揃えた創作和食居酒屋です。
ー野菜ソムリエとは凄いですね!魚介もスタッフさんが毎朝仕入れているとのことで手が込んでいますね。全体的に和食ベースのようですが、海外からのお客様にも人気があるのではないでしょうか?
はい。やはり銀座という土地柄もあり、毎日のように海外からのお客様がいらっしゃいます。観光客として来る方もいますし、ビジネスマンの方が外国人社員と一緒に来ることも多いですね。
客層は幅広く、20代、30代、40~50代とさまざまなお客様にご利用いただいています。
ーなるほど。お酒の種類も多く、掘りごたつのお部屋・個室もあるので、ビジネスシーンや女子会、普段飲みなど使い勝手が良さそうですね!この賑わっている都心の居酒屋で、外国人アルバイトの採用を始めたのはいつ頃だったんでしょうか?
外国人をはじめて採用したのは、たしか5年ほど前だったかと思います。いくつかアルバイト紹介の会社さんを利用させていただきました。
ー5年も前から外国人採用をされているのですね!あえて外国人を採用しようと思ったきっかけはあったんでしょうか?
そうですね…やはりこの売り手市場で、日本人の採用が困難になってきたのはひとつのきっかけでした。
日本人の採用が出来なくなり、社内で真剣に外国人採用について考えたんですね。外国人だとどうしても語学の壁は出てきてしまうものの、調理場や裏方であれば、採用できるのでは?という話が出ました。
そこで採用の見直しをして、調理場や洗い場ポジションメインで外国人の採用を始めたという流れです。
ー5年前から既に飲食業界の採用は厳しくなっていたということなんですね。そこですぐに外国人の採用に目を向けられ、前向きに取り組まれたのは素晴らしいですね。とはいえ、初めの方はけっこう大変なことが多かったのではないでしょうか?
はい。やはり語学の問題で、仕事のやり方、メニューの覚え方など、理解を深めてもらうことは非常に大変でした。
はじめは東南アジア系の方の採用が多かったのですが、漢字のメニューを読むのがとても難しかったようですね。
そこで、外国人アルバイトを雇い始めてから、お店のメニューにはすべてひらがなでふりがなを振るようにしたり、注文を取るときのハンディの印字をひらがなにしたりと、少しでも彼らが自分で読んで理解できる仕組みづくりを行うようにしました。
ー日本語は話せるけれど、漢字は難しいと言いますよね。日本の漢字は1つの文字に複数の読み方、意味があるので難易度が高いと。注文を取るハンディの設定まで外国人用に変えるのって、細かいところですがきちんと対応されていて凄いですね!
ありがとうございます。おっしゃる通りで、漢字を読むのは本当に難しいようです。しかし語学が出来ない=仕事が出来ないとは思っていないんですよね。
また、ハンディの設定を変更したりメニューにふりがなを振ることは手間がかかることではありますが、接客をしている途中で『これ何て読むんですか?』と毎回聞かれて毎回答える方が大変ですし、それだと本人たちの成長レベルが高まらないと思ったんです。
もちろん、入社して最初の方は、マンツーマンでしっかり指導していきますが、外国人アルバイトの将来を考えると、きちんと理解を深めて仕事をしてもらい、1人立ちできるシステムを作ることの方が重要だと感じました。
私たち雇用側は、彼らが働きやすいような土台作りをして、そのあとは個人の成長に合わせてサポートしていくことが大切だと思っています。
ー手取り足取り教えるのではなく、長期的な視点で見たときに、外国人アルバイトが自立して働けることが重要で、そのための土台作りをするという考えですね。他の飲食店オーナー様のお手本となる考え方だと思います。
その他に、外国人スタッフと接する際に気を付けていることはどんなことですか?
気を付けていることは、日本語の正しい”言葉遣い”でしょうか。これは外国人アルバイトを採用し始めてから改めて気付いたのですが、彼らは仕事を通して日本語を学ぼうとしますよね。
つまり、自分たちが発した言葉が、すべて彼らのお手本になるんです。
どうしても、飲食店なので忙しい時は、少しだけ荒い言葉遣いになってしまうこともありますが、汚い言葉を使ってしまうと外国人アルバイトにとって良くないですよね。
あとは、各業界であると思いますが、この飲食業界ならではの言葉遣いとか…お店の中だけで使う表現ってあるじゃないですか。(例えば、とある飲食店ではトイレに行くときや休憩を取るときに『3番行ってきます』のような隠語を使うということ)
これもちゃんと意味を伝えておかないと、外国人アルバイトは理解しづらいものですよね。
なので、分かりやすい言葉、正しい表現で会話することを心がけることで、彼らの正しい日本語習得につながればいいなとは思っています。
ーたしかに!仰る通りですね。ましてや日本に来たばかり、日本語学校に通い出したばかりの留学生たちは『バイトを通して日本語を学びたい』と言っています。汚い日本語を教えたくないですよね。
お話を伺っていると志村様は、アルバイトさんの教育に非常に丁寧に取り組まれていると感じます。
これは私がこだわっている点ではありますが、彼らがもし別の場所で働くとき、就職するとき必ず『どこでアルバイトしていたの?』と聞かれると思います。
その時に悪い意味で『え、どこで働いてたの?何してたの?』と言われたらダメだと思うんです。
金の独楽で働いていた子は、挨拶がしっかりできて、社会人としてのスキル・ルールを身に着けているねと思われるのが理想だと思っています。
自分の店ではOKのルールだとしても、社会に出たらアウトのことってたくさんあるはずなんです。社会に出て彼らに痛い目を見てほしくないんですよね。
だからこそ、どこに行っても基本となる『返事・挨拶』はとにかくしっかり覚えてもらいますし、留学生であればWワークしてもいいけれど、28時間の制限は超えないように管理してねと伝えています。
外国人のアルバイトさんは、いずれは卒業して国に帰るなり、日本で就職することになると思うので、彼らが今後何をしていきたいのか?ということも大事にしたいなと思っているんですよね。
うちで働いている外国人スタッフに、将来どうするの?と聞いてみると、日本で就職したい、ガイドの仕事をしてみたいなど色んな夢を抱えています。
その将来をサポートすることも私たちの仕事だと思いながら、日々接しています。
ー単なる人員として一時的に採用をするのではなく、一緒に働くことで彼らの将来にどうつながっていくのか?先々まで見据えながら外国人採用を行ってらっしゃるんですね。きっとスタッフさんも店長のことを凄く慕っているのでは?
ありがたいことに、当店の外国人スタッフはドタキャンはしませんし、多少体調が悪くても頑張って出勤してくれていますね!
もちろん、居酒屋の立ち仕事なので、思ったより大変だったからと辞めてしまう子もいましたが。
今働いているメンバーは、絶対に無断欠勤しませんし、連絡が取れなくなるなんてことはありません。
それは嬉しいことだと思います。
ー素晴らしいです!でも『挨拶してね』とか『返事をしてね』と伝えて、すぐにできるものなのでしょうか?
そうですね。ただ一方的に『~をしなさい』と伝えても、やっぱり日本人と感覚が違うのですぐに理解できないんだと思います。
なので、『〇〇の理由があるから、返事することが大切なんだよ』と、必ず背景や理由をセットにして伝えるように心がけています。
今では、外国人だから理由を伝えなきゃ、というのではなく、日本人スタッフとコミュニケーションを取るときにも大切な伝え方だなと思っていますね。
ーたしかに、一方的に言われるよりも『何故それをしなくちゃいけないのか?』という理由があれば、とても腹落ちしやすいですね。
少し観点を変えますが、外国人を採用し始めてからお客様のリアクションはどうですか?
お客様はとても優しいです。やはり外国人スタッフと同じ国のお客様がいらっしゃったときは、楽しそうに母国語でお話していますし。
それがきっかけでリピーターになってくださるお客様もいます。
日本人のお客様も、メニューが聞き取れるようにゆっくり注文してくださったり気遣ってくださるので、良くコミュニケーションが取れているなと思います。
ーリピーターにつながるとは本当に嬉しいですね!お客様からも受入れられているのでしたら、外国人の採用は大成功ということでしょうか。
ー最後に、いくつか外人バンクのことを質問させていただければと思います。
最近、弊社の外人バンクの人材紹介サービスでロシア人の女の子を採用していただいたようですが、外人バンクとはどのように出会ったのでしょうか?
外人バンクさんと出会ったのは最近でして、営業の方にお電話をいただいてご提案を受けました。
ーありがとうございます。外人バンクを使ってみて率直にどうでしたか?ご感想をお願いします!
はい。今回外人バンクさんから紹介いただいたのはロシア人の女性(留学生)でした。実は、今まで弊社では東南アジア系の方の採用が多かったんですね。
今まではネパール、ベトナム、台湾の方の採用をしていたので、それ以外の地域出身の外国人採用は会社として新しい実績となり良かったなと思っています。
また、彼女は日本に来て1年もたっていなくて接客業は初めてでした。日本語を覚えることと、接客の基礎を覚えることは大変ではありますが、逆に経験がないからこそ自分のお店の色に染められると言いますか、育てやすさがあると感じています。
5年前の外国人採用を始めた当初は、外国人スタッフは調理場やドリンカーなど裏方仕事が多かったのですが、今では本人の適正にあわせてホール・接客もお願いしてるんですね。
彼女はとても気が利きますし、今は色んなことを吸収しながらホールのお仕事を頑張ってくれています!
■取材を終えて
今回の取材では、『外国人を日本語レベルで判断するのではなく、1人1人のスキル・人間性を見て正しく評価していきたい』というセリフが非常に印象的でした。
複数の企業インタビューをする中で、多くの企業様は『採用後のコミュニケーションが難しい』『言葉の壁がある』とお話されており、大半の企業では日本語レベルがひとつの重要な採用基準になっていることは事実です。
しかし、語学が多少苦手でも接客サービスは出来ます。
仕事を通して日本語を学ばせてあげれば良いという前向きなスタンスでいれば、将来性のある新たな人材を確保することが出来るとお話されていました。
日本人の若手労働力は確実に減少しています。
外国人だから面倒くさい、日本語が出来ないから仕事も無理、そのような決めつけはせずに『どうやったら外国の方の力を活かせるのだろう?』と考えを切り替えていくことが大切なのだと感じました。
終始優しい笑顔で、丁寧にご対応いただいた志村様、今回は本当にありがとうございました!
これからも外人バンクを通して採用された方がご活躍されることを祈っています。
取材協力/金の独楽 様
〒104-0031 東京都中央区京橋3-4-4イーストサイドビル 2階・4階
営業時間/月~木:17時~0時、金:17時~2時、土:16時30分~23時30分
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