外国人も社会保険の加入義務がある!厚生年金/健康保険/雇用・労災・介護保険
雇用形態や国籍を問わず日本国内に住所を持っている人は全員、社会保険への加入義務があります。
外国人だから払わなくていいのでは?と、社会保険手続きを怠っていると罰則を受ける可能性があるので、本記事でしっかりと社会保険の理解を深めましょう。
※2019年6月13日更新
5つの社会保険の種類と役割
社会保険とは、労働に関係が深い労災保険と雇用保険、老後の生活のための厚生年金保険(国民年金)、健康保険、介護保険の総称です。
大前提として、日本では住民基本台帳制度が設けられており、日本に住所を有する人は各社会保険に加入しなければならないという取り決めになっています。
ただし、一時的に日本に観光に来た外国人は除くので、原則として3か月以上日本に住所を有する外国人は各種社会保険の適用対象となります。
社会保険が適用されないケース
雇用する外国人がアルバイト・パートの時短労働者の場合、1週間の所定労働日数・時間が短くなるため社会保険加入が免除されます。
通常のフルタイム(正社員)と比べて、所定労働日数が4分の3未満であれば社会保険の加入が不要です。
(1)厚生年金と国民年金
厚生年金保険および国民年金は、老後の生活のために積み立てていく年金です。
これらの年金は、日本に住所を有する人で20歳~60歳未満であれば全員支払う義務があるので、外国人にも加入義務が発生します。
外国人だから大丈夫では?と言って入らなかったり、企業側も支払いを怠ったりしてしまうと問題となってしまいます。
(2)国民健康保険
日本では国民皆保険制度をとっており、国民は何かしらの公的な医療保険制度に加入しなければならないというルールがあります。
外国人が住所を有する最寄りの市区町村で、国民保険証を発行してもらうことが可能です。
また企業勤めの外国人の場合は、自分の勤める会社が全国健康保険協会に加入しなければならない強制適用事業所か、任意加入の任意適用事業所かによって加入する保険が異なります。
全国健康保険協会に加入している事業所の従業員は、国籍・年齢・性別を問わず被保険者=健康保険の加入者となることが原則です。つまり全国健康保険協会に加入している事業所で働く場合は、外国人労働者も健康保険への加入義務が発生するということになります。
また、健康保険と厚生年金保険はセットとなるので、健康保険だけ入って厚生年金保険は入らない、またはその逆もNGなので覚えておきましょう。
健康保険加入が適用除外のケース
外国人も原則、健康保険に入ることになっていますが、いくつか適用除外となるケースもあります。
①従業員数500人以下の事業所
その会社で1か月勤務する正社員の平均所定労働時間の4分の3以下であるパートタイマー
社会保障の協定締結国の健康保険に加入している外国人労働者
この2つに該当する場合の加入義務はありません。
②従業員数501人以上の事業所
週の労働時間が20時間以下
月の賃金が88,000円以下
雇用の期間が1年以下
夜間や通信学校、定時制ではない学生
これら4つすべてに該当する場合、外国人の健康保険への加入義務はありません。
国民健康保険に入りたくても入れないケース
基本的には外国人も健康保険に加入する義務がありますが、以下の人たちは加入が出来ません。
在留期限が切れている
3か月未満の短期滞在者
外交、公用の在留資格者
これらの人たちは例外的に、健康保険に加入できないので覚えておきましょう。
(3)介護保険
40歳以上65歳未満で医療保険に加入している人と65歳以上の人はすべて被保険者となり、日本に住所を有する人であれば外国人にも適用されます。
帰国した場合でも日本に3か月以上在住した人は、外国人登録をする時に日本の住民記帳台帳に登録されるので、その登録履歴をもとに介護保険のサービスを受けることになります。
例外としては、3か月以上滞在するものの滞在目的が観光や遊学などの「特定活動」の場合、一定の条件をクリアしていれば介護保険の被保険者とはなりません。
もしくは滞在期間(在留期間)が3か月未満で帰国した場合は介護保険適用外となるので、介護保険の被保険者の資格はなく日本の介護サービスは受けることができません。
(4)雇用保険
雇用保険も基本的には日本人と同じ条件で外国人にも適用されます。
ここまで何度も説明している通り、外国人社員だから社会保険はいらないだろうという考えは誤りで、雇用主は保険料をきちんと納める義務があるので注意しましょう。
週の所定労働時間が20時間以上であること
1年以上継続して雇用される見込みがあること
この条件を満たしていれば、外国人も雇用保険に加入する必要があります。
また、手続きのときは在留カードが必要となるので雇用の際は在留カードの写しを控えておきましょう。
(5)労災保険
労災保険は、1人でも人を雇用しているのであれば企業は必ず納めなければならない保険です。
外国人であっても労災保険は適用され、万が一企業側が労災保険を故意に支払わなかった場合、企業は雇用者の請求を全額負担しなければならない可能性もあります。
企業の大小関わらず、労働者の仕事中の事故・けがを守るための保険なので、雇用主は外国人に対してもきちんと労災保険を整備するようにしましょう。
『社会保障協定』とは厚生年金適用免除の制度
日本に住む外国人は、日本と変わらず厚生年金を納める必要があるとお話してきました。
外国人の母国にも年金制度がある場合、日本の年金制度と二重の支払いが発生してしまうと困るので、年金保険を二重に支払わないように作られた制度が社会保障制度です。
社会保障協定は特定の国と協定を結んだもので、協定を結んだ国の人たちは日本で納めた年金を母国に帰国後も受け取れるようになります。
社会保障協定の16か国
次の16か国が、社会保障協定を結んでいます。
アメリカ
ドイツ
イギリス
韓国
フランス
ベルギー
カナダ
オーストラリア
スペイン
チェコ
スイス
ハンガリー
アイルランド
ブラジル
オランダ
インド
(2019年6月4日現在)
前の章で、健康保険と厚生年金保険は同時に加入義務があるとご説明しましたが、この社会保障協定は厚生年金保険のみに適用されます。
つまり、社会保障協定を締結している国出身の外国人の場合は、厚生年金保険は自国の制度に加入しつつ健康保険は日本で加入することになる可能性があります。
そのため、外国人の採用をするときは社会保障協定を結んでいる国を覚えておくと良いでしょう。
脱退一時金とは
すべての外国人が日本に定住するわけではなく、一時的に日本に滞在して老後は自国に戻るというケースも多くあるでしょう。
その場合、せっかく日本で働いて納めた厚生年金はどう受け取るのでしょうか?
厚生年金を日本で受け取る前に帰国する人たちのために脱退一時金制度が設けられています。
脱退一時金制度を使えば、直近日本で納税した金額に合わせて、老後を待たずして何割かが払い戻しされる仕組みとなっています。
※参考『脱退一時金・国民年金の支払い額』
この資料によると、平成30年度に6か月以上12か月未満の国民年金を納めていた外国人は49,020円の脱退一時金を受け取れることとなります。
外国人の社会保険手続きに困ったら
外国人を採用するときは、日本人と同様に社会保険の加入義務があることがわかりました。
社会保険の種類、出身国、日本の滞在時間、労働時間によって加入義務の有無や手続き方法が変動するので注意しましょう。
とはいえ、たくさんの採用業務がある中でこれらの知識を暗記しておくことは大変でしょう。
もし社会保険の手続きで困ったら、ハローワークの外国人雇用管理アドバイザーや、最寄りの行政書士事務所、外国人採用を支援している人材会社などに相談するのをおすすめします。