特定技能で外国人が35万人増加?!それでも人手は644万人不足する
2019年4月に新設された特定技能ビザを用いると、外国人労働者の受け入れは直近5年で最大約35万人増やすことが出来ます。しかしパーソル総合研究所の調査(以下、同調査とする)によると、10年後の日本では労働者数が644万人不足すると言われています。
本記事では、外国人労働者の増加推移と、特定技能ビザでの受入れ数、そして日本全体を見たときにどれだけ労働者数が不足しているのかをまとめまてご紹介します。
※2019年5月20日更新
2030年の日本では644万人の労働者不足に
同調査によると、2030年の日本で必要とされる労働需要人口は7,073万人であり、労働供給数は6,429万人と予測されています。この需要と供給の差である644万人が追い付かない見込みです。
産業別に見ると、とりわけ飲食・サービス業が厳しく400万人が不足、次いで医療・福祉業では187万人も足りない見込みです。採用が追い付かず廃業する企業も出てきている今、この労働人口の問題は他人ごとではないことが分かります。
同調査の少し前のデータですが、2017年度の人手不足数は121万人と算出されていました。そこから近い将来である2020年には384万人不足し倍以上に、そして約10年後の2030年には644万人も労働者が足りなくなるのです。これは非常に驚異的なデータではないでしょうか。
この労働不足の穴をどうやって埋めるか
この644万人をどう埋めていくか?と考えたときに、まず考えられる方法は次の2つ、『働く人数を増やすこと』そして『1人1人の生産性をあげること』です。
(別軸で見ていけば、子どもの出生率を上げて少子化を止めることも大きなテーマですが本記事では上記2つの視点でお話します。)
働く人数を増やすという観点では、同調査が述べているように女性、シニア、外国人のほかにも、障がい者、LGBT、Wワーカーを増やすという視点もあるでしょう。また、人的資源ではなくITを労働力として取り入れていくことも必要です。
これらの『新しい労働者』を増やしつつ働き方改革によって個々人の生産性を上げることで、不足し続ける日本の労働力を埋めていかなければなりません。
では、株式会社エムティックが関わっている外国人は現在どれほどの人数が働いており、今後どの程度増加していく見込みなのでしょうか?次の章からは厚生労働省のデータをもとに、最近新設された特定技能ビザと絡めてご紹介していきます。
外国人労働者数の推移データ(2018年10月度最新情報)
日本で働く外国人労働者の推移に関するデータは、毎年厚生労働省が『外国人雇用状況の届出状況について』という資料で報道発表しています。
『外国人雇用状況届出書』とは、企業が外国人を雇用する際に、最寄りのハローワークに提出する届出のことです。
※外国人雇用状況届出様式について(厚生労働省サイトに推移します)
※詳しくは『外国人雇用状況届出書は外国人採用をする企業の義務』をご覧ください。
在留資格別の外国人労働者の推移
2018年10月の最新情報を見ると、日本で働く外国人労働者は146万人と過去最高値となりました。
少しデータをさかのぼっていくと、2008年のから2013年にかけての5年間は、486万人から718万人へ1.47倍となっています。しかし直近の5年間は71.8万人から146万人へと2倍増なので、近年急速に外国人労働者が増えていることが分かります。
直近の1年間だけを見ても、2017年度の127.9万人から2018年度の146万へとたった1年間で約18万人も増加しているのです。
アジア圏を中心に受入れ拡大/ベトナムは急増
国籍別に外国人労働者の人数を見ていきましょう。
1位 中国 389,117人
2位 ベトナム人 316,840人
3位 フィリピン人 164,006人
4位 ブラジル人 127,392人
5位 ネパール人 81,562人
6位 オーストラリア+ニュージーランド 77,505人
7位 韓国 62,516人
8位 インドネシア 41,586人
9位 ペルー 28,686人
※その他 171,253人除く
中国や韓国といったアジア圏の訪日外国人は以前から多い印象でしたが、直近の1年では特にベトナムが前年の240,259人に76,581人プラスして、1.3倍となっています。
これに対してフィリピンの伸び率は146,798人から164,006人への1.1倍、中国の伸び率は1.04倍ですから、ベトナムがいかに一気に伸びているかということが分かるでしょう。
また、ベトナム以外にもインドネシアとネパールの伸び率が高いことも興味深いです。インドネシアは前年34,159人から1.2倍の41,586人になり、ネパールは69,111人から1.18倍の81,562人となりました。
1位の中国389,117人に比較すると、まだまだ少ないものの、今後の外国人労働者数の底上げをしていく国となるでしょう。
業種別で見ると製造業・卸小売り業・宿泊飲食業での受入れが目立つ
どのような業界で外国人労働者が活躍しているイメージがありますか?同調査によると、製造業を筆頭にブルーカラー領域での雇用が大半を占めています。
1位 製造業 21.4%
2位 卸売、小売り業 17.0%
3位 宿泊、飲食サービス業 14.5%
4位 建設業 9.4%
5位 情報、通信業/医療、福祉業 同率4.6%
6位 教育、学習支援業 2.8%
※その他サービス業と分類されないもの(25.7%)を除く
直近の伸び率を見てみると、製造業と卸売、小売り業は前年よりもやや減少しており、代わって宿泊、飲食サービス業と建設業が増加しています。
日本国内で圧倒的に不足するとされている業種は飲食サービス業と医療・福祉業でした。先に述べた通り、飲食・サービス業は2030年には400万人が不足、次いで医療・福祉業では187万人が足りない計算です。
対して、外国人に人気な仕事の中に飲食サービス業と医療・福祉業があることから、外国人の労働力が今の日本そして今後の日本をどれだけ支えてくれているのか、ということが見えてくるでしょう。
在留資格別に見ると技能実習や特定活動の資格保有者が伸びている
在留資格別に、外国人労働者を分類すると身分にもとづく在留資格(日本人の配偶者や子どもなど就労制限がない人々)が全体の3分の1ほどを占めています。
また本来は就労目的のビザではないものの、技能実習生の受入れも進み、直近では技能実習で働く外国人労働者数は1.2倍となりました。
1位 身分に基づく在留資格(日本人の配偶者や子、永住者や定住者) 495,668人/33.9%
2位 資格外活動(主に留学生)343,791人/23.5%
3位 技能実習(本来は就労目的ではないビザ)308,489人/21.1%
4位 専門的・技術的分野の在留資格(技人国を筆頭にした専門知識を要するビザ) 276,770人/19%
5位 特定活動 35,615人/2.4%
※不明の130人を除く
外国人と日本人の雇用の最大の違いはこの在留資格です。
外国人一人ひとりに与えられる在留資格は、就労を許可するものと、大前提として就労不可のものがあります。たとえば、現在日本で多くの人が就労している技能実習制度は、もともとは就労目的で作られた制度ではなく、外国人たちが日本の技術を日本に持ち帰るために作られた在留資格です。
技能実習制度で外国人労働者を増やしていくためには限度があります。また、留学生の多くがアルバイトをしているものの、彼らの在留資格の1番の目的は学業です。
これらの背景から、外国人の働くための在留資格が必要になってきました。
そこで2019年に『日本の人手不足を補うための外国人の就労ビザ』として、新しい在留資格である特定技能が新設される運びとなったのです。
※技能実習制度について詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
特定技能ビザによって増える見込みの外国人労働者数
ここまで、厚生労働省の調査データをもとに外国人労働者の推移を見てきました。続いて、2019年4月に新設された新たな在留資格である特定技能により、どのくらいの外国人労働者が今後増えていくのか法務省入国管理局のデータを見ていきましょう。
14分野で想定される受入れ見込み数(最大値)
介護 60,000人
ビルクリーニング 37,000人
素材系産業 21,500人
産業機械製造業 5,250人
電気・電子情報関連産業 4,700人
建設 40,000人
造船・舶用工業 13,000人
自動車整備 7,000人
航空 2,200人
宿泊 22,000人
農業 36,500人
漁業 9,000人
飲食料品製造業 34,000人
外食業 53,000人
合計で345,150人となっています。
しかし、特定技能ビザはまだ始まったばかりで、この在留資格を取得するための試験日程はまだ決まっていないものばかりです。試験を受ける以外にも、技能実習制度を修了した人でも特定技能に切り替える権利はありますが、特定技能に関するルールは非常に複雑です。
すなわち、特定技能ビザを用いて最大で約35万人の外国人労働者が増えると言われつつも、実際は急増するのではなく徐々に外国人労働者数が増えていくと見られています。
※特定技能について詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
『2019年4月新設!外国人の在留資格「特定技能」14分野と試験日程』
まとめ
今回は、日本の労働力の需要と供給バランスの現状、その足りない労働力を補う外国人労働者数の推移など、直近のデータをご紹介しました。
増え続ける外国人労働者を快く受け入れない人々もいますが、正直なところ今のままでは日本の経済は支えきれません。新しい雇用のあり方、生産性をあげるための働き方改革の推進を中心に、日本の労働状況について誰もが真剣に考え、真正面から取り組んでいかなければならないでしょう。
その第一歩として、現実をしっかり理解するためのツールとして、本記事のデータ並びに『外国人採用お役立ちコラム』が皆さまの参考になれば幸いです。
※バックナンバーはこちらから 外国人採用お役立ちコラム
※データ参照 【出典記載例】パーソル総合研究所・中央大学「労働市場の未来推計2030」